臨床神経学

短報

少量L-dopa治療により対側線条体の脳血流が改善した片側パーキンソン病の1例

田口 芳治, 高嶋 修太郎, 浅岡 悦子, 道具 伸浩, 井上 博

富山医科薬科大学第二内科〔〒930-0194 富山市杉谷2630〕

症例は57歳女性である.3年前より左上下肢のこわばりを自覚し,徐々に進行するため平成11年4月当科に入院した.振戦や寡動はなかったが,左上下肢に歯車様の筋強剛をみとめた.頭部MRIで異常所見はなく,薬剤の服用歴もないことからHoehn-Yahr stage Iのパーキンソン病と診断した.治療前の脳血流SPECTで右側線条体に血流低下がみとめられた.levodopa/DCI(100 mg/日)の投薬後,左上下肢の筋強剛は減少し,脳血流SPECTでみとめられた右側線条体の血流低下は改善した.その機序として,L-dopaが両側線条体の代謝を直接賦活した可能性,あるいは罹患肢の運動量が増加したために間接的に脳血流量が増加した可能性と共に,少量のL-dopa投与で線条体の局所脳血流量の左右差が改善したことより,罹患肢の反対側の線条体にdopamineに対するdenervation supersensitivityが存在する可能性が示唆された.

(臨床神経, 44:443−445, 2004)
key words:パーキンソン病, 脳血流量, 線条体, dopamine, SPECT

(受付日:2003年5月27日)