臨床神経学

症例報告

MRI拡散強調画像が診断に有用であったWernicke脳症の1例

橋本 貴司1), 上田 治夫1), 三井 良之1), 木原 幹洋1), 高橋 光雄2), 楠 進1)

1)近畿大學神経内科〔〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2〕
2)高橋西梅田クリニック

Wernicke脳症におけるMRI拡散強調画像が臨床診断に有用であった1例を報告した.症例は66歳男性.アルコール多飲で食事摂取しなくなり,軽度の傾眠をくりかえした.血中vitamin B1は正常下限であった.頭部MRI上,T2強調画像では異常なく,MRI拡散強調画像にて,中脳被蓋部に高信号域を呈した.直ちにビタミン補充療法を開始し,その後,臨床症状が軽快し,約1カ月後のMRI拡散強調画像では中脳被蓋部高信号域の縮小をみとめた.本例はWernicke脳症としては非常に軽症例であったと考えられ,T2強調画像で病変を指摘できない時期でもMRI拡散強調画像にもとづいてWernicke脳症と診断して治療すれば予後は良好であると考えられた.

(臨床神経, 44:422−426, 2004)
key words:Wernicke脳症, vitamin B1, 拡散強調画像

(受付日:2003年7月9日)