臨床神経学

症例報告

ブタ回虫幼虫移行症によるmyeloradiculitisを呈した1例

吉田 園代1), 松井 真1), 王 会雲1), 大江田 知子1), 佐々木 智子1), 小牟禮 修1), 小澤 恭子1), 小西 哲郎1), 斎田 孝彦1), 芳川 浩男2), 名和 行文3)

1)国立療養所宇多野病院神経内科〔〒616-8255 京都市右京区鳴滝音戸山町8〕
2)現・兵庫医科大学・総合内科学
3)宮崎大学医学部・寄生虫学

症例は35歳男性である.左足つま先に自覚したびりびり感がしだいに上行し,左下肢脱力や排尿障害が加わった.Th10椎体レベルの脊髄内にガドリニウム造影病変をみとめ,ステロイドパルス療法で症状は軽快した.4カ月後から同様の症状の再燃がみとめられ,神経学的には腰髄部のmyeloradiculopathyの所見と,Th8-9椎体レベル脊髄の造影病巣をみとめた.血清および髄液中抗体陽性所見からブタ回虫幼虫移行症と診断した.駆虫薬とステロイドパルス療法の併用で症状は改善し,再発もみとめられなかった.髄液中の好酸球増多はなかったが,IL-2受容体陽性の活性化ヘルパーT細胞の著明な増加が特徴的であった.

(臨床神経, 44:198−202, 2004)
key words:ブタ回虫, 幼虫移行症, myeloradiculitis, CD4CD25細胞, ステロイドパルス療法

(受付日:2003年9月26日)