臨床神経学

原著

舞踏運動を呈した症例に対する分子遺伝学的解析

下畑 享良1), 小野寺 理2), 本間 義章3), 廣田 紘一4), 布村 仁一5), 木村 哲也1), 河内 泉1), 三瓶 一弘6), 西澤 正豊1), 辻 省次7)

1)新潟大学脳研究所神経内科〔〒951-8585 新潟市旭町通1番町757番地〕
2)新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター
3)介護老人保健施設「さど」
4)秋田県赤十字血液センター
5)黒石市国保黒石病院神経内科
6)佐渡総合病院神経内科
7)東京大学大学院医学系研究科

本邦における舞踏病の病型頻度を明らかにする目的で,1997年から2002年までの間に当科に依頼があった79名の舞踏病症例に対し遺伝子診断をおこなった.この結果,ハンチントン病を36家系37名,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症を7家系7名でみとめた.ハンチントン病類縁疾患1型および2型,遺伝性脊髄小脳変性症17型はみとめなかった.残りは上記のいずれでもない症例であったが,常染色体優性遺伝形式と考えられる症例が2家系3名,両親に血族結婚を認める症例が2家系2名ふくまれていた.以上より本邦における舞踏病は遺伝学的に不均質であること,ならびに従来の報告にない遺伝性舞踏病が存在する可能性が示唆された.

(臨床神経, 44:149−153, 2004)
key words:舞踏運動, 遺伝子診断, ハンチントン病, ハンチントン病類縁疾患, 遺伝性脊髄小脳変性症17型

(受付日:2003年8月2日)