臨床神経学

短報

Dysferlin遺伝子に変異をみとめず,dysferlin蛋白の筋線維内局在異常をみとめた遠位型筋ジストロフィーの1例

保住 功1), 高橋 俊明2), 青木 正志2), 林 由起子3), 鈴木 直輝2), 松山 善次郎1), 犬塚 貴1), 埜中 征哉4)

1)岐阜大学大学院医学研究科神経情報統御学講座神経内科・老年学分野〔〒501-1194 岐阜市柳戸1番1〕
2)東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神経内科学〔〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1-1〕
3)国立精神・神経センター神経研究所〔〒187-8502 小平市小川東町4-1-1〕
4)国立精神・神経センター武蔵病院〔〒187-8551 小平市小川東町4-1-1〕

症例は40歳男性である.36歳頃からつま先立ちができず,下腿屈筋に選択的な筋力低下をみとめ,血清CK値に軽度の上昇があった.筋CTで腓腹筋,ひらめ筋に限局した筋萎縮と脂肪化をみとめ,筋生検では筋ジストロフィーの所見,神経原性変化,タイプ1線維優位の所見がみとめられた.Dysferlinの免疫染色では筋細胞膜の免疫反応は微弱で不均一かつ細胞質内に免疫反応陽性物質が貯蓄していたが,イムノブロットやdysferlin遺伝子のすべてのエクソンの塩基配列に異常はみとめなかった.今後dysferlinの遺伝子検索をふくめた類似症例の蓄積はdysferlinの発現メカニズムを解明する上で重要である.

(臨床神経, 44:699−702, 2004)
key words:遠位型筋ジストロフィー, 三好型ミオパチー, dysferlin, 免疫組織学的検索

(受付日:2004年3月14日)