臨床神経学

症例報告

バルプロ酸の単剤服薬により高アンモニア脳症をきたしたSjögren症候群の1例

中里 良彦, 安藤 さつき, 山元 敏正, 田村 直俊, 島津 邦男

埼玉医科大学神経内科〔〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38〕

症例は56歳の女性である.55歳時に全身痙攣発作を生じ,バルプロ酸(valproic acid,VPA)の服薬が開始された.服薬10カ月後に気分不快,嘔気の後,痙攣発作を再発,発作消失後も意識障害が遷延した.血液検査で肝機能異常をともなわない高アンモニア血症をみとめ,意識障害の原因はVPAの副作用による高アンモニア脳症と考えた.血清カルニチン値は正常であった.抗核抗体,抗SS-A抗体が陽性で,唾液腺生検で特徴的な所見をみとめたことから,本症例の基礎疾患はSjögren症候群と診断した.コントロール良好なVPA服用患者に原因不明の痙攣発作,意識障害が生じたときは,VPA副作用としての高アンモニア血症・脳症の可能性も考慮すべきである.

(臨床神経, 44:682−685, 2004)
key words:バルプロ酸, 高アンモニア血症, 脳症, Sjögren症候群

(受付日:2004年2月27日)