臨床神経学

症例報告

同種骨髄移植後早期に神経症候の改善をみとめたadolescent adrenoleukodystrophy(ALD)の1例

辻井 知美, 木下 真幸子, 冨本 秀和, 人見 健文, 岡崎 俊朗, 内山 卓, 柴崎 浩

京都大学大学院医学研究科・臨床神経学〔〒606-8507 京都市左京区聖護院河原町54〕
同 血液病態学

同種骨髄移植で神経症候の改善をみとめたadolescent adrenoleukodystrophyの一例を報告した.症例は20歳男性であり,右上下肢の脱力で受診した.極長鎖脂肪酸・ACTH高値,脳MRIで左延髄・基底核・脳梁膨大部の白質病変をみとめ,遺伝子検査にてALDPコドン606の点変異が存在し,adrenoleukodystrophyと診断した.Lorenzo's oilの内服と同時に骨髄移植donorを検索し,診断後半年で同種骨髄移植を施行した.症状は緩徐進行性であり,移植直前の神経学的評価で右顔面・右上下肢の筋力低下,跛行をみとめた.また右上下肢の深部腱反射は亢進し,両側の右下1/4盲,純粋失読,軽度認知機能障害をみとめた.移植後2カ月にて,歩行障害・右上肢筋力の改善をみとめ,脳MRI・経頭蓋磁気刺激でも改善をみとめた.以上より発症早期のadolescent adrenoleukodystrophy症例において,同種骨髄移植が有効であると考えられた.

(臨床神経, 44:667−672, 2004)
key words:思春期型副腎白質ジストロフィー, 極長鎖脂肪酸, MRI, Lorenzo's oil, 骨髄移植

(受付日:2002年9月20日)