臨床神経学

原著

抗リン脂質抗体陽性脊髄症の臨床的検討

堤 由紀子, 望月 温子, 丸山 恵子, 内山 真一郎, 岩田 誠

東京女子医科大学 神経内科〔〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1〕

抗リン脂質抗体(aPL)陽性の脊髄症5症例について,臨床的特徴と発症機序を検討した.5例とも抗カルジオリピンIgM抗体が陽性であった.4例は亜急性発症で,そのうち2例は髄液の炎症所見をともなっており,臨床症状は改善した.しかし急性発症の1例は髄液の炎症所見はなく,症状は改善しなかった.5例中3例は原発性抗aPL症候群の診断基準に合致した.病態生理学的にaPLが脊髄症をきたす機序は,血栓症により血液脊髄関門が破綻して炎症が周囲に波及するためと考えられ,血栓症と炎症の関与の大きさにより髄液所見に違いがあると考えられた.治療は個々の病態によりステロイドと抗凝固療法を適宜もちいるのが,aPLの脊髄症に有効と考えられた.

(臨床神経, 44:655−660, 2004)
key words:抗リン脂質抗体症候群, 脊髄炎, 抗カルジオリピン抗体, IgM

(受付日:2003年12月31日)