臨床神経学

症例報告

常染色体優性遺伝性側頭葉てんかんに運動感覚性ニューロパチーを合併する一家系

松岡 健1), 古谷 博和1), 池添 浩二1), 村井 弘之1), 大八木 保政1), 吉浦 敬2), 佐々木 雅之2), 飛松 省三3), 吉良 潤一1)

1)九州大学大学院医学研究院附属脳神経病研究施設神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
3)同 臨床神経生理学
2)九州大学大学院医学研究院機能制御医学部門臨床放射線科学

20歳男性例を報告した.6歳頃より,複雑部分発作が頻回におこるようになる.フェニトイン内服にて一時期発作の頻度は減少したが,18歳頃より増悪し治療目的で入院した.数年前より足趾の筋力低下を自覚していた.神経学的に下肢遠位筋の軽度筋力低下と槌状趾・凹足あり.母方の4世代10名に常染色体優性遺伝形式でてんかん発作の病歴あり.ビデオ脳波モニターで,自動症にともない左前側頭部から突発性律動波が出現し,全般化と同時に意識減損がみられ,二次性全般化した側頭葉てんかん(TLE)と診断された.末梢神経伝導速度検査で,腓骨神経の遠位潜時延長と複合筋活動電位の振幅低下をみとめた.母親と妹にもてんかん発作,足趾筋の脱力・下肢振動覚の低下,槌状趾と凹足がみとめられた.本家系は常染色体優性遺伝形式をとり,TLEと軸索変性が主体の運動・感覚性ニューロパチーを呈する新しい遺伝性疾患の一家系と考えられた.

(臨床神経, 44:43−49, 2004)
key words:側頭葉てんかん, 多発ニューロパチー, 槌状趾, 凹足(pes cavus), 遺伝性運動感覚性ニューロパチー

(受付日:2003年9月8日)