臨床神経学

症例報告

Ictal polyopsiaを呈した右内側側頭葉てんかんの1症例

岡田 和将1), 赤松 直樹1), 橋本 朋子1), 魚住 武則1), 辻 貞俊1)

産業医科大学神経内科〔〒807-0804 北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1〕

症例は59歳女性である.57歳時から注視している他人の腕や顔,テレビの中の人物が突然左方に2〜3個連なってみえる視覚発作が出現した.この症状は左視野に出現し,単眼視でも自覚され,背景視野は正常で2〜3秒で消失した.神経学的所見に異常はなかった.頭部MRIで右内側側頭葉部に腫瘍様病変をみとめた.視覚誘発電位は両側正常.脳波では右内側側頭部に棘波をみとめた.蝶形骨電極刺入下でビデオ脳波モニタリングを施行し,polyopsia出現と同期して右内側側頭部にてんかん性活動をみとめた.抗てんかん薬投与後視覚発作は消失.Polyopsiaは内側側頭葉てんかんのまれな症候として重要であると考えられた.

(臨床神経, 44:39−42, 2004)
key words:polyopsia, 視覚発作, 空間的視覚保続, 内側側頭葉てんかん

(受付日:2003年8月1日)