臨床神経学

短報

遠位筋萎縮をみとめた(GCG)13変異を有する眼咽頭筋ジストロフィーの1例

中島 大成1), 中嶋 秀人1), 石田 志門2), 杉野 正一1), 木村 文治1), 花房 俊昭1)

1)大阪医科大学第一内科〔〒569-8686 高槻市大学町2-7〕
2)市立枚方市民病院内科

症例は52歳女性である.49歳時,嚥下困難と鼻声が出現した.発病約18カ月後より歩行障害も出現した.両側眼瞼下垂,頬筋萎縮,母指球筋と骨間筋,下腿筋の萎縮をみとめた.針筋電図検査では筋原性変化と脱神経電位をみとめ,右大腿四頭筋筋生検にて著明な筋線維の大小不同とrimmed vacuoleを有する筋線維をみとめたが,同時に小角化線維も確認された,筋CTでは大腿・下腿屈筋群に脂肪変性をともなう筋萎縮をみとめた.眼咽頭筋ジストロフィーの遺伝子異常として,ポリA結合蛋白質(PABP2)遺伝子のGCGリピート増大が報告され,健常者のGCGリピート数6に対し患者では8〜13回に増大する.本例のGCGリピート数は13回であり眼咽頭筋ジストロフィーと診断した.四肢遠位筋萎縮は眼咽頭筋ジストロフィーの症状としてまれとされてきたが,本例は電気生理学的所見と筋病理所見での神経原性変化とCTでの下腿屈筋群の筋萎縮像をみとめるなど示唆に富む症例と考えられた.

(臨床神経, 43:560−563, 2003)
key words:眼咽頭筋ジストロフィー, ポリA結合蛋白質遺伝子, 遠位筋萎縮

(受付日:2003年3月14日)