臨床神経学

症例報告

抗インターフェロンα抗体価が著明高値を示した胸腺腫合併重症筋無力症の1例―治療にともなう症状・抗体価の推移について

中森 雅之, 松村 剛, 斉藤 利雄, 国富 厚宏, 猪山 昭徳, 野崎 園子, 藤村 晴俊, 神野 進

国立療養所刀根山病院神経内科〔〒560-8552 大阪府豊中市刀根山5-1-1〕
現 大阪大学大学院医学系研究科神経機能医学講座神経内科学〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕

症例は73歳女性である.胸腺腫合併重症筋無力症で,抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性のほか,抗インターフェロンα(IFN-α)抗体価も著明に高値を示した.拡大胸腺摘除術,ステロイドパルス療法,タクロリムスによる治療をおこない,臨床症状の推移と抗体価の変動を観察した.術後抗AChR抗体価は低下したが,抗IFN-α抗体価は高値で持続し,症状は遷延した.IFN-αは抗原提示細胞やNK細胞,ヘルパー/サプレッサーT細胞,B細胞の活性調節に関わっている.胸腺腫合併重症筋無力症では,IFN-αを介した免疫バランス異常の病態への関与が示唆され,抗IFN-α抗体が重要な予後決定因子の一つであると考えられた.

(臨床神経, 43:544−547, 2003)
key words:重症筋無力症, 胸腺腫, インターフェロンα, 抗インターフェロンα抗体

(受付日:2003年5月12日)