臨床神経学

症例報告

2つのことなる機序のニューロパチーをともなったシェーグレン症候群の1例―発症機序と治療法に関する考察―

野口 悦正1), 土山 高明1), 松本 卓1), 藤ヶ崎 浩人1), 稲葉 彰2), 横田 隆徳1), 神田 隆1), 水澤 英洋1)

東京医科歯科大学〔〒113-8519 東京都文京区湯島1丁目5-45〕
1)大学院脳神経機能病態学講座
2)医学部附属病院検査部

症例は62歳女性である.四肢の感覚障害および軽度の発熱,その1カ月後に筋力低下が出現し徐々に進行した.四肢の筋萎縮と末梢神経の分布に一致する感覚障害をみとめ,臨床症状,血液検査,唾液腺生検からシェーグレン症候群にともなう多発性単神経炎と診断した.腓腹神経生検で血管炎をみとめ,ステロイド治療を施行したところ筋力低下,感覚障害とも著明に改善した.2年後に皮膚分節に一致した運動麻痺をともなわない表在覚障害と非常に強い深部感覚障害が出現し,シェーグレン症候群にともなう後根神経節炎と診断した.免疫グロブリン大量療法(IVIg)を施行したところ,感覚障害は軽快した.シェーグレン症候群は多彩なニューロパチーを合併することが知られており,また約25%で2つ以上のニューロパチーを合併するが1),それぞれの発症機序に応じて治療法を選択することが重要であると考えられた.

(臨床神経, 43:539−543, 2003)
key words:シェーグレン症候群, ニューロパチー, 免疫グロブリン大量療法, ステロイド

(受付日:2003年4月16日)