臨床神経学

短報

胸腺腫と抗アセチルコリン受容体抗体陽性がみられた眼瞼攣縮の1例

津田 浩昌1), 亀井 聡1), 水谷 智彦1), 齋藤 紀子2), 石川 弘2), 大森 一光3)

1)日本大学医学部内科学講座神経内科部門〔〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1〕
2)同 眼科学教室
3)同 胸部外科

症例は70歳の女性である.2000年11月から両眼の瞬目がしだいに多くなり,とくに夕方に症状が増悪した.2002年10月から開瞼が困難になり,当科を受診した.神経学的にはJankovic分類の重症度3,頻度3の眼瞼攣縮がみられた.テンシロン試験で症状は改善せず,両側眼輪筋の反復誘発筋電図検査も陰性であった.しかし,抗アセチルコリン受容体抗体が軽度上昇し,胸部CTで胸腺腫も確認された.胸腺腫摘出術後,眼瞼攣縮は軽度改善した.眼瞼攣縮の治療には,ボツリヌス毒素,抗コリン薬などが一般的である.しかし,症状に日内変動がある症例では,重症筋無力症が合併している可能性もあり,慎重に治療の適応を決めるべきである.

(臨床神経, 43:500−502, 2003)
key words:眼瞼攣縮, 重症筋無力症, 抗アセチルコリン受容体抗体, 胸腺腫

(受付日:2003年5月19日)