臨床神経学

短報

浸潤性胸腺腫・重症筋無力症の経過観察中に巨細胞性心筋炎・筋炎を併発した1例

佐藤 秀樹1), 岩崎 栄典1), 野川 茂1), 鈴木 重明1), 天野 隆弘1), 福内 靖男1), 下田 将之2), 岡田 保典2)

1)慶應義塾大学神経内科 〔〒160-8582 東京都新宿区信濃町35〕
2)同 病理学

症例は62歳男性である.45歳時に重症筋無力症・浸潤性胸腺腫と診断され拡大胸腺摘出術などを施行された.61歳時筋無力性クリーゼを経験し,以後ステロイド剤で経過観察されていたが,62歳になり糖尿病増悪からタクロリムスが追加された.その際,心電図上ST変化を指摘された.3カ月後,全身倦怠・呼吸困難が出現.房室解離・心室調律の心電図異常を呈し,ステロイドパルス・大量免疫グロブリン療法を施行されるも死亡した.剖検で心筋・骨格筋に巨細胞をともなう炎症細胞浸潤をみとめ,重症筋無力症・多発筋炎・巨細胞心筋炎・胸腺腫症候群と診断された.本例はその病態を検討する上で貴重な症例と考えられた.

(臨床神経, 43:496−499, 2003)
key words:重症筋無力症, 多発筋炎, 巨細胞心筋炎, 胸腺腫

(受付日:2003年3月31日)