臨床神経学

症例報告

セルロプラスミン遺伝子変異をヘテロでともなった多系統萎縮症の1剖検例

四茂野 はるみ1), 栗崎 博司1), 村山 繁雄2), 蛇沢 晶3), 宮嶋 裕明4), 高橋 良知4)

1)国療東京病院神経内科〔〒204-8585 東京都清瀬市竹丘3-1-1〕
2)都立老人総合研究所神経病理
3)国療東京病院病理科
4)浜松医科大学第一内科

低セルロプラスミン(Cp)血症をともなった69歳女性の剖検例を報告した.Cp遺伝子exon11に変異G1874A(ヘテロ)があり,血清Cpは13 mg/dlと半減していた.パーキンソニズムと自律神経症状が主症状で,5年の経過で喉頭狭窄のため死亡した.MRIでは両側被殻の高信号と軽度の橋底部萎縮がみられ,症状と画像所見から線条体黒質変性症(SND)型多系統萎縮症(MSA)と考えた.神経病理所見では黒質・被殻に強い変性がみられたほか,橋底部・小脳にも病変があり,グリア細胞質内封入体(GCI)をみとめることからMSAと診断した.本例はCp遺伝子変異をともなったMSAの最初の報告例である.

(臨床神経, 43:398−402, 2003)
key words:セルロプラスミン遺伝子変異, 低セルロプラスミン血症, 多系統萎縮症

(受付日:2002年8月1日)