臨床神経学

短報

外側膝状体性同名半盲がみられた多発性硬化症の1例

津田 浩昌1), 石川 弘2), 岩田 光浩2), 高橋 輝行1), 塩田 宏嗣1), 水谷 智彦1)

1)日本大学医学部内科学講座神経内科部門〔〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1〕
2)同 眼科学教室

症例は31歳,女性.2002年9月中旬から両下肢遠位部の感覚障害が出現した.11月中旬から両眼の視野障害を自覚した.近医での視野検査で,左右非対称性で楔形の左同名半盲を指摘され,12月2日に当院眼科を受診した.神経学的所見で,左同名半盲の他に両下肢遠位部の感覚障害とLhermitte徴候がみられた.MRIで,右外側膝状体,両側側脳室周囲,および上部頸髄に脱髄病変が確認され,多発性硬化症と診断された.ステロイドパルス療法で視野障害はすみやかに軽快した.多発性硬化症で,外側膝状体の病変により同名半盲を呈することはきわめてまれであるので報告した.

(臨床神経, 43:370−373, 2003)
key words:多発性硬化症, 同名半盲, 外側膝状体, 磁気共鳴画像(MRI)

(受付日:2002年3月18日)