臨床神経学

症例報告

髄液中グルタミン酸受容体自己抗体陽性を示した,高齢発症の難治性てんかん

田中 優司1)2), 西田 浩2), 山田 治2), 高橋 幸利3)*, 森脇 久隆1)

1)岐阜大学医学部第1内科〔〒500-8705 岐阜市司町40〕
2)岐阜県立岐阜病院神経内科
3)岐阜県立岐阜病院小児科
現 国立療養所静岡神経医療センター小児科

症例は77歳男性である.右上肢と右顔面の痙攣からなる単純部分発作が重積し入院した.右不全片麻痺と球麻痺をみとめた.脳波は左頭頂部を焦点とするspikeをともなう徐波,MRI T2強調画像で左中心後回に高信号域をみとめた.痙攣発作は頻回に生じ,通常の抗てんかん薬やジアゼパムではコントロールできず,バルビツレート療法を必要とした.髄液中抗GluRε2抗体がIgG型,IgM型とも陽性で,IgG型自己抗体のエピトープはC末であった.本例の病態には,高齢発症ではあるが小児の慢性進行性持続性部分てんかん類似の自己免疫的機序が関与した可能性と,全身検索で進行胃癌が指摘されており傍腫瘍性症候群が関与した可能性が考えられた.

(臨床神経, 43:345−349, 2003)
key words:難治性てんかん, グルタミン酸受容体自己抗体, 高齢発症, 傍腫瘍性症候群

(受付日:2003年2月19日)