臨床神経学

短報

プレドニゾロン大量投与中に難治性下痢を主徴とする腸壁嚢胞状気腫をきたした重症筋無力症の1例

亀山 佳織1), 野口 悦正1), 松本 卓1), 竹縄 寛2), 藤ヶ崎 浩人1), 神田 隆1), 水澤 英洋1)

1)東京医科歯科大学大学院脳神経機能病態学講座〔〒113-8519 東京都文京区湯島1丁目59-45〕
2)同 消化・代謝内科学講座

重症筋無力症(MG)の経過中,難治性下痢を主徴とする腸壁嚢胞状気腫(pneumatosis intestinalis:PI)を併発した1例を経験した.症例は37歳女性である.眼瞼下垂,筋力低下を主訴に来院した.症状と検査結果よりMGと診断し,拡大胸腺摘出術施行後プレドニゾロン(PSL)投与を開始した.難治性のため長期大量投与を要した.5カ月後腹痛と頻回の下痢が出現し,腹部X線検査によりPIと診断した.高圧酸素療法等は無効であったが,PSLの漸減にともない消化器症状は改善した.本例はMGの治療中にPIを併発した希少な症例である.PIの原因はPSLの長期大量投与と考えられた.MGではしばしばPSL大量投与を要することがあり,頻回の下痢が出現したばあいはPIの併発も考慮する必要がある.

(臨床神経, 43:277−280, 2003)
key words:重症筋無力症, 腸壁嚢胞状気腫, 持続性難治性下痢, プレドニゾロン

(受付日:2002年11月26日)