臨床神経学

短報

痙攣にともなう筋崩壊により凝固線溶系の活性化がみとめられたDuchenne型筋ジストロフィーの1例

斉藤 利雄, 松村 剛, 野崎 園子, 神野 進

国立療養所刀根山病院神経内科〔〒560-8552 大阪府豊中市刀根山5-1-1〕

臥床状態で人工呼吸療法施行中のDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)の1進行例で,強直間代性痙攣にともなう血清creatine kinaseのいちじるしい上昇,それに起因すると考えられる,血漿D-dimer,thrombin antithrombin complexの上昇,antithrombinIIIの低下といった凝固線溶系の活性化をみとめた.DMDでは血栓・塞栓症が合併することが知られているが,その機序は明確にされていない.本症例では血栓・塞栓症は発症しなかったが,DMD進行例において急激な筋崩壊は凝固線溶系に影響し,血栓・塞栓症の原因となる可能性がある.

(臨床神経, 43:274−276, 2003)
key words:creatine kinase(CK), D-dimer, Duchenne型筋ジストロフィー(DMD), fibrin and fibrinogen degradation products(FDP)

(受付日:2002年11月7日)