臨床神経学

短報

一側下肢の単麻痺で発症し,対麻痺を経て四肢麻痺にいたった両側延髄内側梗塞の1例

小林 禅, 日野 太郎, 金澤 俊郎, 横手 裕明, 横田 隆徳, 神田 隆, 水澤 英洋

東京医科歯科大学大学院脳神経機能病態学〔〒181-0012 三鷹市上連雀8-13-27〕

一側下肢の単麻痺から対麻痺を経て四肢麻痺へ進行した両側延髄内側梗塞の1例を報告した.患者は69歳,男性.左下肢単麻痺にて発症し,対麻痺を経て第4病日には四肢麻痺へ進行した.頭部MRIにて両側延髄の内側部に異常信号域をみとめ,両側延髄内側梗塞と診断した.下肢への錐体路の交叉部位は,上肢への錐体路の交叉部位より尾側にあり,下肢への錐体路は錐体交叉直後のみ上肢への錐体路の内側を走行するが,以降は外側を走行すると推測されている.本例では病変が錐体交叉下部のほぼ中央部より発生したと考えられる.本例のような臨床経過を示したばあい,両側延髄内側梗塞を考慮し,精査する必要がある.

(臨床神経, 43:195−198, 2003)
key words:両側延髄内側梗塞, 錐体交叉, 錐体路

(受付日:2003年1月15日)