臨床神経学

短報

MR spectroscopyが鑑別診断に有用であった血管内悪性リンパ腫の1例

鈴木 直輝1), 永井 真貴子1), 石垣 あや1), 鈴木 靖士2), 小野寺 宏1), 城倉 英史3), 隈部 俊宏3)  志賀 裕正1), 糸山 泰人1)

1)東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神経内科学分野〔〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1-1〕
2)現・国立仙台病院神経内科〔〒983-0045 仙台市宮城野区宮城野2-8-8〕
3)東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神経外科学分野〔〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1-1〕

症例は49歳女性である.注意力低下で発症し,その後意識混濁,幻覚,左不全片麻痺を呈した.髄液検査では細胞数,糖は正常で蛋白の軽度増加をみとめた.細胞診はclass I.頭部MRIにて皮質下白質にT2強調画像(T2WI)とFLAIRで高信号域が多発していた.急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を考えステロイドパルス療法をおこなった.症状は一時改善の後に再燃した.MR spectroscopy(MRS)ではcholine上昇,NAA低下,lactate peakの出現をみとめる腫瘍パターンであり,脳生検にて血管内悪性リンパ腫(IVL)と診断した.MRSはADEMとIVLとの鑑別に非常に有用であった.早期の診断・治療はIVLの予後に重要である.

(臨床神経, 43:180−182, 2003)
key words:血管内悪性リンパ腫, 急性散在性脳脊髄炎, MRI, MRS

(受付日:2002年7月19日)