臨床神経学

原著

非ヘルペス性急性辺縁系脳炎(NHALE)の自験2例における髄液中サイトカインの検討

高橋 輝行1), 亀井 聡1), 三木 健司1), 小川 克彦2), 水谷 智彦1)

1)日本大学医学部内科学講座神経内科部門〔〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1〕
2)同 医学部付属練馬光が丘病院神経内科〔〒179-0072 東京都練馬区光が丘2-11-1〕

髄液中のinterleukin(IL)-6の高値をみとめた非ヘルペス性急性辺縁系脳炎(non-herpetic acute limbic encephalitis;NHALE)の2症例を報告する.【症例1】25歳の女性.感冒様症状の後に,発熱・高度の意識障害で発症し,全身性痙攣をともなった.意識障害は改善したが,軽度の逆行性健忘と症候性てんかんを残した.【症例2】58歳,男性.感冒様症状の後に発熱・頭痛・軽度の意識障害・精神症状で発症した.臨床症状のほとんどは改善したが,性格変化と軽度の逆行性健忘を残した.両例とも単純ヘルペスウイルスの感染と悪性腫瘍の合併は否定的であった.両例の共通の特徴として,(1)感冒様の先行感染,(2)頭部MRI拡散強調画像における両側の海馬・扁桃体の可逆性高信号病変,(3)髄液中のIL-6のみの高値,(4)ステロイドパルス療法の著効,の4点が挙げられた.これらの特徴から,NHALEの病態に何らかの宿主側の免疫応答が関与している可能性を推測した.

(臨床神経, 43:162−169, 2003)
key words:非ヘルペス性急性辺縁系脳炎, interleukin(IL)-6, 拡散強調画像, 海馬・扁桃体, ステロイドパルス療法

(受付日:2003年1月7日)