臨床神経学

短報

びまん性軸索損傷により振戦をきたした1例

谷口 央1), 新井田 広仁2), 谷口 昌光3), 立川 浩1), 関原 芳夫4)

1)立川メディカルセンター悠遊健康村病院神経内科〔〒940-2138 新潟県長岡市大字日越337番地〕
2)立川メディカルセンター悠遊健康村病院脳神経外科
3)群馬大学神経内科
4)長岡赤十字病院脳神経外科

頭部外傷後に,頭部と一側上肢に粗大な振戦を生じた一例を経験した.症例は25歳女性である.頭部は首を横に振る振戦で,右上肢の振戦は姿勢時にみられ,とくに意図動作時に振幅が大きくなる性質をもっていた.頭部MRI上,典型的なびまん性軸索損傷の病巣を呈しており,中でも歯状核遠心路にあたる右上小脳脚をふくむ中脳背側部の病巣が本例の振戦に深く関与していると考えられた.振戦が出現するのに受傷後約3週間を要したことから,その発現機序として,右上小脳脚の障害により二次的に視床あるいは錐体外路が影響を受けた可能性が考えられた.また,外傷後振戦は難治性であるといわれているが,trihexyphenidylが著効した.

(臨床神経, 43:41−44, 2003)
key words:びまん性軸索損傷, 振戦, 歯状核遠心路, トリヘキシフェニジル

(受付日:2002年10月29日)