臨床神経学

短報

血栓性血小板減少性紫斑病を合併したデュシェンヌ型筋ジストロフィーの1例

松村 剛, 横江 勝, 齊藤 利雄, 国富 厚宏, 野崎 園子, 神野 進

国立療養所刀根山病院神経内科〔〒560-8552 大阪府豊中市刀根山5-1-1〕

感染を契機に呼吸不全の急性増悪をきたして入院したデュシェンヌ型筋ジストロフィーの1例で,血栓性血小板減少性紫斑病の合併を経験した.血小板は最低で2万/mm3まで減少したが,血漿交換により良好な経過をえた.回復後に測定したvon Willebrand factor特異的切断酵素活性は21%と低下していた.これまで,本症は脳梗塞や肺梗塞などの血栓症が年齢に比して高頻度にみとめられ,血栓準備状態にあることが示唆されてきた.しかし,血栓性血小板減少性紫斑病を合併した症例は,われわれが検索しえた範囲でこれまでになく,本症における血栓症を考える上で,貴重な症例と思われる.

(臨床神経, 43:31−34, 2003)
key words:デュシェンヌ型筋ジストロフィー, 血栓性血小板減少性紫斑病, 血栓症, 高ビリルビン血症, von Willebrand factor特異的切断酵素活性

(受付日:2002年6月24日)