臨床神経学

症例報告

子宮癌に対するシスプラチン動注療法後に生じたlumbo-sacral radiculopathyの2例

原 賢寿1), 他田 真理2), 成瀬 聡1), 相馬 芳明3), 小島 由美4), 倉田 仁4), 田中 憲一4), 辻 省次1)5)

1)新潟大学脳研究所神経内科, 2)新潟こばり病院神経内科, 3)相馬神経内科クリニック, 4)新潟大学医学部産婦人科, 5)東京大学大学院医学系研究科神経内科

症例1は60歳女性である.子宮体癌再発に対し両側内腸骨動脈からシスプラチンの動注療法がおこなわれ,その翌日より左下腿の疼痛と坐骨神経麻痺を発症した.6カ月後麻痺は軽度の改善をみとめた.発症2カ月後の腰部MRIでは造影される病巣はみとめなかった.症例2は49歳女性である.子宮頸癌に対しシスプラチンの動注療法がおこなわれ,その3日後より右下腿の疼痛が出現し,発症10日後の腰部MRIでは右S1神経根の明らかな造影効果がみとめられた.疼痛は対症療法によりほぼ改善した.シスプラチンの動注療法後の腸仙骨部の神経障害については,産婦人科,泌尿器科,放射線科領域では報告が散見される.しかし,神経内科領域ではあまり注目されておらず,かつMRIでの病巣を検出した例もないため報告した.

(臨床神経, 43:26−30, 2003)
key words:シスプラチン, 動注化学療法, 神経根, 坐骨神経麻痺, MRI

(受付日:2002年11月19日)