臨床神経学

症例報告

痙縮と小脳性運動失調をともなった,脊髄小脳変性症類似のHuntington病の1成人発症例

影山 恭史, 山本 真士, 上野 正夫, 市川 桂二

兵庫県立尼崎病院神経内科〔〒660-0828 兵庫県尼崎市東大物町1-1-1〕

痙縮と小脳性運動失調を呈し,脊髄小脳変性症(SCD)との鑑別が困難であったHuntington病(HD)の1例を経験した.症例は49歳女性である.42歳時より下肢の不随意運動が出現し,しだいに全身に及んだ.歩行や会話が困難となり来院した.神経学的に易怒性,痴呆,全身の舞踏運動,痙縮をともなう錐体路症候,小脳性運動失調をみとめた.脳MRIにて尾状核の萎縮に加え,中脳,橋,小脳の萎縮があった.鑑別にDRPLAなどSCDが考えられたが遺伝子検査で否定され,huntingtin遺伝子のCAGリピート数の異常伸長(47コピー)よりHDと診断した.本例のように臨床,画像的にSCDにきわめて類似したHDの症例はまれで,文献的考察を加え報告する.

(臨床神経, 43:16−19, 2003)
key words:Huntington病, 痙縮, 小脳性運動失調, 脊髄小脳変性症, DNA診断

(受付日:2002年9月12日)