臨床神経学

短報

歩行着地時に左足関節がtask-specific focal dystoniaを呈した中年男性の1例

清水 高弘, 白石 眞, 平山 俊和, 杉原 浩, 高橋 洋一

聖マリアンナ医科大学神経内科〔〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1〕

歩行中に左足関節が尖足・内反の肢位を呈する局所性ジストニーを呈した一例を報告した.本症例のジストニーは,歩行の着地動作時のみに限局してみられた.頭部から腰髄までの中枢神経系のMRI上に明らかな異常所見はなく,表面筋電図では歩行時遊脚相のみに,患側の腓腹筋に持続する異常放電を認めた.治療は,薬物療法に反応なく,短下肢装具装着によって効果が認められた.本症例は,装具によって皮質のrepresentationが正常化したことより症状が改善したと考えられ,一側下肢の歩行時のみに関連し発症した特発性の局所性ジストニーの発生機序を考える上で示唆に富む症例と考えた.

(臨床神経, 42:895−897, 2002)
key words:局所性ジストニー, 表面筋電図, 感覚トリック

(受付日:2002年9月6日)