臨床神経学

短報

痙性歩行を主徴とし,特発性門脈圧亢進症に高マンガン血症をともない,頸髄MRIで異常所見を呈した1症例

小浜 るり子, 立川 浩, 吉井 文均, 竹岡 常行, 篠原 幸人

東海大学医学部神経内科〔〒259-1143 神奈川県伊勢原市下糟屋143〕

特発性門脈圧亢進症に高マンガン血症をともない,痙性歩行を主徴とした48歳女性を報告した.頸部MRIでは,C4-C6椎体レベルの脊髄の右側にT2強調画像で高信号域をみとめ,高マンガン血症と関係した肝性脊髄症の所見と考えられた.また,頭部MRIで両側淡蒼球,大脳脚内側にT1強調画像で高信号をみとめ,両側深部白質,両側内包後脚にT2強調画像で高信号域をみとめた.脾摘術後に血中マンガン値は減少し,右下垂足も背屈可能になるまで改善した.

(臨床神経, 42:885−888, 2002)
key words:マンガン, 特発性門脈圧亢進症, 痙性歩行, MRI, 肝性脊髄症

(受付日:2002年5月22日)