臨床神経学

症例報告

MPO-ANCA関連の脊髄肥厚性硬膜炎の1例

薬師寺 祐介1), 黒原 和博1), 戸田 修二2), 阿部 雅光3), 黒田 康夫1)

1)佐賀医科大学内科〔〒849-8501 佐賀県佐賀市鍋島5丁目1-1〕
2)同 病理学講座
3)同 脳神経外科

症例は71歳の男性である.背部痛と胸部横断性脊髄症状が亜急性に出現した.胸椎MRIで上部胸髄に全周性の硬膜肥厚をみとめ,生検で肥厚性硬膜炎と診断した.血清および髄液中でMPO-ANCAの異常高値をみとめた.副腎皮質ステロイド薬の経口投与で硬膜肥厚は消失し,同時に血中,髄液MPO-ANCA値が改善した.本例は脊髄に限局したMPO-ANCA陽性の肥厚性硬膜炎に関する最初の報告である.本例は髄液中のMPO-ANCA産生の算出が診断に有用であること,さらに早期のステロイド投与が必要であることを示した.

(臨床神経, 42:873−877, 2002)
key words:肥厚性硬膜炎, myeloperoxidase anti-neutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA), MRI, 副腎皮質ステロイド, 髄液検査

(受付日:2002年5月1日)