臨床神経学

症例報告

一過性に脊髄自動反射が出現した原因不明のmyelopathyの1例―電気生理学的検討

鏡原 康裕1), 和田 学3), 小森 哲夫1), 清水 俊夫1), 四宮 美恵子2)

1)都立神経病院神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕
2)同 検査科
3)山形大学医学部第三内科

一過性に脊髄自動反射が出現した原因不明のmyelopathyの1例を報告した.50歳女性で,急性に両下肢の筋力低下と不随意運動が出現し,歩行困難となった.不随意運動は両下肢において数秒から十数秒の間隔で三重屈曲現象様であった.電気生理学検査では下肢においてF波やMEP出現の約40ms後に筋放電が誘発された.腓腹神経刺激による下腿筋運動ニューロンの興奮性をしらべた.H反射および加算表面筋電図において健常人で出現する抑制ではなく,促通がみられた.本症例では脊髄自動反射の病態として,皮膚神経の入力を受ける抑制性介在ニューロンの機能低下あるいは興奮性介在ニューロンの機能亢進が関与していると考えられた.

(臨床神経, 42:859−863, 2002)
key words:脊髄自動反射, 皮膚反射, 屈筋反射, 脊髄介在ニューロン

(受付日:2002年9月6日)