臨床神経学

原著

肺動静脈瘻による奇異性脳塞栓症の臨床的検討―注目すべき右左シャント疾患―

木村 和美, 古賀 政利, 松本 省二, 井上 剛, 峰松 一夫

国立循環器病センター内科脳血管部門〔〒565-8565 吹田市藤白台5-7-1〕

Rendu-Osler-Weber(R-O-W)病の合併のない肺動静脈瘻と脳梗塞との関連は不明である.われわれの経験したR-O-W病の合併のない肺動静脈瘻をともなう脳梗塞の頻度は急性期脳梗塞の0.6%(4例/642例)であった.全例に深部静脈血栓を3例に肺塞栓症を合併しており肺動静脈瘻を介する奇異性脳塞栓症と診断した.共通する臨床的特徴は,1)中年の女性,2)明らかな呼吸障害の訴えはなく,3)発症は朝で,4)椎骨脳底動脈系梗塞がほとんどで,5)脳虚血発作の既往があり,6)肺動静脈瘻はほとんど右下肺に単発し,7)肺動静脈瘻の経皮的カテーテル塞栓術後には再発がみられないことである.塞栓源不明の脳塞栓症において,肺動静脈瘻の検索は重要である.

(臨床神経, 42:849−854, 2002)
key words:右左シャント, 肺動静脈瘻, 奇異性脳塞栓症, Rendu-Osler-Weber病, 経皮的カテーテル塞栓術

(受付日:2002年9月5日)