臨床神経学

症例報告

味覚障害で発症した被殻出血

今村 明子, 楠原 智彦, 中島 雅士, 辻 正之, 山田 達夫

福岡大学医学部内科学第5教室〔〒814-0180 福岡県福岡市城南区七隈7-45-1〕

味覚障害で発症し,翌日には構音・嚥下障害が加わった48歳の男性例を報告した.頭部CTでは右被殻に限局して出血をみとめ,頭部MRIでは,これに加えて左放線冠,両側基底核と右橋被蓋に陳旧性脳梗塞をみとめた.嚥下・構音障害は,基底核と放線冠の陳旧性梗塞巣に今回の出血が加わって発症した偽性球麻痺と考えられた.味覚障害もこれと同様に,陳旧性右橋被蓋病変による一側の味覚路障害に加えて,被殻出血により島皮質へ連絡する対側の味覚経路が障害されたために発症したと考えられた.

(臨床神経, 42:750−753, 2002)
key words:味覚, 偽性球麻痺, 被殻出血, 橋被蓋, MRI

(受付日:2002年4月26日)