臨床神経学

症例報告

痴呆を呈し,毛細血管に高度のβ-amyloid沈着をみとめた孤発性脳アミロイド・アンギオパチーの1剖検例

山下 真理子1), 山本 徹1), 山田 正仁2), 沖野 惣一2), 藤田 拓司1)

1)大阪府済生会中津病院神経内科〔〒530-0012 大阪市北区芝田2-10-39〕
2)金沢大学大学院医学系研究科脳老化・神経病態学(神経内科)

症例は死亡時75歳の男性である.パーキンソン症状と後に高度の痴呆を主症状とし,全経過8年で死亡.生前に脳血管障害の既往はなかった.剖検では扁桃核に多くの皮質型Lewy bodyをともなうlimbic categoryのLewy小体型痴呆の所見とともに大脳や小脳の軟膜・皮質の細動脈に高度のアミロイドβ蛋白(Aβ)の沈着を,さらに一部にperivascular plaqueの形成をともなう毛細血管壁への著明なAβ沈着を大脳皮質全般にみとめた.APP遺伝子変異はなく,アポリポ蛋白E遺伝子型はε3/ε4であった.本例にみられる毛細血管壁の著明なAβ沈着は孤発例としてはきわめてまれである.脳アミロイド・アンギオパチーでは,脳出血のような血管障害ではなく,本例のように痴呆症状と関連する例があり,注意を要する.

(臨床神経, 42:530−535, 2002)
key words:アポリポ蛋白E遺伝子型, アミロイドβ蛋白, 毛細血管, 脳アミロイド・アンギオパチー, 痴呆

(受付日:2002年4月24日)