臨床神経学

症例報告

Bowen病を合併した神経周膜炎の1例

古庄 健太郎, 渡邊 雅彦, 大越 教夫, 玉岡 晃, 庄司 進一

筑波大学神経内科〔〒305-8575 つくば市天王台1-1-1〕

症例は60歳男性である.亜急性進行性の多発性単神経障害型の感覚障害を主訴に入院した.両側外側足背皮神経領域に感覚障害をみとめ,右内踝での後脛骨神経叩打で足底へ放散する電撃痛をみとめた.右腓腹神経生検では有髄神経線維の高度の脱落と神経周膜に毛細血管増生をともなう著明な肥厚をみとめ,壊死性血管炎はみとめず,神経周膜炎と診断した.また,左肩甲骨下に痂皮をともなう紅色局面をみとめ,皮膚生検所見よりBowen病と診断した.これまで神経周膜炎と悪性腫瘍の合併の報告は数例のみであるが,両者の背景に何らかの免疫機能障害が共通の基盤として想定されている.われわれのしらべえた範囲では神経周膜炎とBowen病の合併の報告はみとめられなかった.

(臨床神経, 42:527−529, 2002)
key words:神経周膜炎, Bowen病, 免疫機能障害, ステロイド

(受付日:2002年2月20日)