臨床神経学

症例報告

後頸部の激痛発作で発症した偽痛風の2例

吉田 拓弘1), 関島 良樹1)2), 星 研一1), 兼子 一真1), 橋本 隆男1), 池田 修一1)

1)信州大学第3内科〔〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1〕
2)豊科赤十字病院神経内科〔〒399-8292 長野県南安曇郡豊科町大字豊科5685〕

後頸部痛で発症した偽痛風の2例を報告した.患者は,70歳以上の高齢者で,後頸部の痛みと発熱で発症し,血沈とCRPの上昇をみとめ,NSAIDsが有効である,という共通の特徴を有していた.頸椎単純レントゲンおよびMRIで痛みや炎症反応を説明しうる異常所見はみとめられず,髄液検査も正常であった.頸椎単純CTで黄色靭帯に結節状の石灰化をみとめたことから,ピロリン酸カルシウム2水加物の沈着による頸椎関節炎(偽痛風)と診断した.頸椎に偽痛風が発症した報告は少ないが,これまで見逃されていた可能性が高い.今後,高齢者の後頸部痛の鑑別として偽痛風を念頭におく必要があり,診断には頸椎CTが有用である.

(臨床神経, 42:308−312, 2002)
key words:偽痛風, ピロリン酸カルシウム2水加物, 後頸部痛, 発熱, 頸椎CT

(受付日:2002年4月10日)