臨床神経学

短報

Dide-Botcazo症候群を生じた両側後大脳動脈領域の脳梗塞の1例

森野 浩太郎, 米田 行宏, 稲葉 良子1), 喜多 也寸志, 田渕 正康, 森 悦朗2)

兵庫県立姫路循環器病センター神経内科〔〒670-0981 兵庫県姫路市西庄甲520〕
1)リハビリテーション科
2)兵庫県立姫路循環器病センター高齢者脳機能治療室
現 兵庫県立総合リハビリテーションセンター神経内科

両側後大脳動脈領域の広範な心原性脳塞栓症により,持続する皮質盲,記憶障害,地理的失見当識を合併した,いわゆる“Dide-Botcazo症候群”の1例を報告する.神経心理学的には,皮質盲とその否認(Anton症状),重度の前向性健忘と約50年におよぶ逆向性健忘,既知および新規の道順障害,軽度の呼称障害が持続した.MRIでは,両側の後頭葉全域,側頭葉内側部,視床に梗塞巣をみとめた.本症候群は,視覚領域と記憶領域,さらに地理的失見当識の責任病巣とされている劣位半球の後頭葉をふくむ一定領域の両側損傷により生じ,臨床的には“top of the basilar”症候群により生じることが多いと思われる.

(臨床神経, 42:247−250, 2002)
key words:脳梗塞, 神経心理学, Dide-Botcazo症候群, Anton症状, “top of the basilar”症候群

(受付日:2002年2月15日)