臨床神経学

症例報告

カタプレキシーと睡眠麻痺を主徴とし早期の診断が困難であったナルコレプシー―非典型例における髄液ヒポクレチン1(オレキシンA)定量の有用性について―

小林 由佳1), 宮本 雅之1), 宮本 智之1), 山崎 薫1), 平田 幸一1), 神林 崇2), 清水 徹男2)

1)獨協医科大学神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕
2)秋田大学医学部精神科

24歳男性である.23歳時から興奮・驚愕時と入眠期に意識減損のない脱力発作をくりかえした.日中の眠気はなし.当初てんかんの診断にて抗てんかん薬の投与うけるが,改善しなかった.HLA-DR2陽性.睡眠ポリグラフで睡眠の分断化,睡眠潜時反復テストでは入眠潜時の短縮と睡眠開始時レム期がみられた.ナルコレプシーがうたがわれ,髄液ヒポクレチン1(オレキシンA)濃度を測定したところ測定限界以下であった.これらの所見よりナルコレプシーと確定診断した.本症の非典型例や不全型では診断の遅れにより,患者は個人的・社会的不利益を被る可能性がある.髄液ヒポクレチン1濃度の測定は本症の早期診断に有用と考える.

(臨床神経, 42:233−236, 2002)
key words:ナルコレプシー, カタプレキシー, 睡眠麻痺, 脱力発作, ヒポクレチン1(オレキシンA)

(受付日:2002年2月5日)