臨床神経学

症例報告

ラミンA/C遺伝子に新たな変異をみとめた常染色体優性Emery-Dreifuss型筋ジストロフィーの本邦第1例

大西 康1), 樋口 じゅん1), 小川 達次1), 滑川 明男2), 林 英守2), 小田倉 弘典2), 後藤 加奈子3), 林 由起子3)

1)仙台市立病院神経内科〔〒984-8501 仙台市若林区清水小路3-1〕
2)同循環器科
3)国立精神神経センター神経研究所疾病研究第一部〔〒187-8502 東京都小平市小川東町4-1-1〕

常染色体優性Emery-Dreifuss型筋ジストロフィーの本邦第一例を報告した.症例は49歳女性.45歳時に脳塞栓症を発症した際,筋疾患の合併と慢性心房細動,高度房室ブロック,心室期外収縮を指摘された.娘は痩せと心電図異常を指摘されている.神経学的には,左右対称性の口輪筋の筋力低下と麻痺側である右側に強い両側性の四肢の筋萎縮と筋力低下があり,後頸部筋,肘,膝,足の関節拘縮をみとめた.筋電図と筋生検所見は筋原性変化を示した.遺伝子検索の結果,ラミンA/C遺伝子のエクソン5にSer303Proの新たな変異が確認された.突然死の予防としてペースメーカ植え込みをおこない,心室頻拍に対してアミオダロンの投与をおこなっている.

(臨床神経, 42:140−144, 2002)
key words:Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー, 常染色体優性遺伝, ラミンA/C遺伝子, ペースメーカー

(受付日:2001年8月28日)