臨床神経学

症例報告

慢性C型肝炎に合併し,著明な末梢神経肥厚を呈した慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の1例

遠藤 一博, 星 明彦, 清水 優, 渡辺 亜貴子, 杉浦 嘉泰, 斎藤 直史, 本間 真理, 山本 悌司

福島県立医科大学医学部神経内科〔〒960-1295 福島県福島市光が丘1番地〕

症例は慢性C型肝炎に罹患し慢性進行性に遠位優位筋力低下と感覚障害を呈した49歳男性.著明な末梢神経肥厚,髄液蛋白細胞解離と高度遠位部潜時延長をみとめ,probable CIDPと診断した.初回治療に大量免疫グロブリン静注療法を施行したが効果なくステロイド治療を施行した.以後徐々に神経症状は改善した.肝炎増悪はなかったがHCV-RNA量の上昇をみた.HCV感染合併CIDPに対するインターフェロン-α療法は議論があり,確立された治療はまだ存在しない.神経画像上,腰神経根に炎症所見を有する例にステロイド療法は有効と思われるが,同療法を施行するさいには注意深いHCV-RNA量の経過観察が必要である.

(臨床神経, 42:27−31, 2002)
key words:慢性炎症性脱髄性多発根神経炎, 慢性C型肝炎, 大量免疫グロブリン静注療法, ステロイド療法, C型肝炎ウィルスRNA量

(受付日:2002年1月7日)