臨床神経学

第42回日本神経学会総会

トッピックスセミナー-VIII
プリオン病,最近の話題

北本 哲之

東北大学医学系研究科病態神経学〔〒980-8575 仙台市青葉区星稜町2-1〕

プリオン病においては,プリオン蛋白遺伝子解析がプリオン病の臨床像・病理像の理解に役立つことが示されてきたが,現時点ではそれだけでは不十分であることが明らかとなり,直接プロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白の分子量の違いによってタイプ1とタイプ2という分類がなされ,この分類と遺伝子解析を加えることによって正確な分類が可能となってきている.最近われわれはフラグメント・プリオン蛋白の存在を明らかとし,硬膜移植後のクロイツフェルト・ヤコブ病の分類に役立つ方法としてもちいるようになった.まず,フラグメント・プリオン蛋白は,C末端の2つのヘリックスとその前のループの一部から構成されるプリオン蛋白のフラグメントである.このフラグメントは,蛋白分解酵素処理をおこなわなくても存在し,2カ所ある糖鎖付加部位には糖鎖のないプリオン蛋白分子種である.異常プリオン蛋白のタイピングに使用されているタイプ1にもタイプ2にもフラグメント・プリオン蛋白が存在するプリオン病があり,フラグメント・プリオン蛋白の存在によって,プリオン病を分類する新しい分類法が確立可能となった.また,ヒト化マウスでの感染実験によって,フラグメント・プリオン蛋白の有無が感染性に非常に影響することが明らかになり,このフラグメントの解析の重要性が増してきた.このように,プリオン病は現在直接異常プリオン蛋白の構造の違いによる分類が可能となってきている.

(臨床神経, 41:1223−1225, 2001)
key words:プリオン病, 異常プリオン蛋白, タイピング, フラグメント

(受付日:2001年5月13日)