第42回日本神経学会総会
特別講演-I
神経幹細胞:神経疾患治療への戦略
岡野 栄之
慶應義塾大学医学部生理学教室〔〒160-8582 東京都新宿区信濃町35〕
神経幹細胞は,多分化能と自己複製能力を有する神経系の前駆細胞である.この特異な性質のため,神経発生の基礎研究のみならず,神経再生を目指した移植医療の面からも注目される存在になってきている.また成体脳で確認された神経幹細胞の存在とニューロンの新生は,記憶・学習さらには統合といった脳の高次機能との関連において,興味深い研究テーマとなっている.神経幹細胞の局在,分離方法,分化調節機構や医療応用をふくむ将来への課題について議論し,考察してみたいと考える.
(臨床神経, 41:1036−1040, 2001)
key words:多分化能, 自己複製能, 領域特異性, 分化転換, 移植
(受付日:2001年5月11日)