臨床神経学

症例報告

Campylobacter jejuni(PEN 19)が分離された,IgG抗GQ1b抗体陰性のフィッシャー症候群/ギラン・バレー症候群オーバーラップ症例

林 泰明1), 古賀 道明2), 高橋 正樹3), 内田 有彦1), 結城 伸泰4)

1)国立病院岡山医療センター神経内科〔〒701-1192 岡山市田益1711-1〕
2)山口大学医学部脳神経病態学(神経内科)
3)東京都立衛生研究所細菌第一研究科
4)獨協医科大学神経内科

Campylobacter jejuniが分離培養されたフィッシャー症候群(FS)/ギラン・バレー症候群(GBS)オーバーラップの70歳女性例を報告した.FSや外眼筋麻痺をともなうGBSではIgG抗GQ1b抗体が検出され,外眼筋麻痺は外直筋優位であることが特徴とされている.しかしながら,本例では動眼神経優位の外眼筋麻痺を示し,IgG抗GQ1b抗体が陰性でGM1b,GM1,GD1a,GD1b,GaINAc-GDIaに対するIgG抗体が陽性であった.FSやFS/GBSオーバーラップ症例からはC. jejuni(PEN2)が分離される頻度が高いことが報告されているが,本例から分離されたC. jejuniはPenner血清型別で19型と判定された.FSとして非典型的な神経眼科的所見と抗ガングリオシド抗体のパターンの発現に,先行感染の病原体であるC. jejuniの血清型が関与した可能性がある.

(臨床神経, 41:801−804, 2001)
key words:フィッシャー症候群, ギラン・バレー症候群, Campylobacter jejuni, 抗ガングリオシド抗体

(受付日:2001年5月2日)