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お知らせ

レベチラセタム使用上の注意改訂に関連して

2013年6月5日

日本神経学会代表理事 水澤 英洋
「てんかん治療ガイドライン」作成委員会委員長 辻 貞俊

 レベチラセタムの使用に際して、添付文書の「使用上の注意の中の重要な基本的注意の項」に「3.易刺激性、錯乱、焦燥、興奮、攻撃性等の精神症状があらわれ、自殺企図に至ることもあるので、本剤投与中は患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。4.患者及びその家族等に攻撃性、自殺企図等の精神症状発現の可能性について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。」、「重大な副作用の項」に「5. 攻撃性、自殺企図(1%未満)  易刺激性、錯乱、焦燥、興奮、攻撃性等の精神症状があらわれ、自殺企図に至ることもあるので、患者の状態に十分注意し、これらの症状があらわれた場合には、徐々に減量し中止するなど適切な処置を行うこと。 」が追記されました(医薬品医療機器情報2013年6月4日掲載)。

 もとより、抗てんかん薬使用に伴って精神症状が生じることがあるのは周知のことであり、日本てんかん学会の「成人てんかんの精神医学的合併症に関する診断・治療ガイドライン」には、「治療のために用いた抗てんかん薬が、精神病性障害や気分(感情)障害などの精神医学的合併症の原因となり、見過ごされていることがある」と明記されています。そして、「抗てんかん薬による精神および行動の障害を予防するためには、強力な抗てんかん薬の追加投与や変更は時間をかけて行い、服薬コンプライアンス維持のための指導を十分に行う」ことが推奨されています。

 今回のレベチラセタムの使用上の注意改訂によって、レベチラセタムがとりわけ危険な薬剤であるとの誤解が生じることがないよう、患者やその家族に対し、適切な説明を行うなど注意が必要です。レベチラセタムによって症状が安定している患者が服用をやめるようなことがあれば、てんかん発作の再発や重積状態の誘発などの危険な事態も憂慮されます。また、難治てんかんをもつ患者への使用が控えられるようなことがあれば、本来は抑制されるべき発作がそのまま持続し、患者のQOLが阻害されることにもなりかねません。一般に、抗てんかん薬の使用開始後や増量後には、精神症状が発現する可能性(この際、動いたり、話したりするのが不自由な重症心身障害児・者では自傷行為の増加として症状が出ることもあります)を念頭において治療をすすめる必要があり、患者やその家族にはいつもと違う変化に十分注意し、異常があれば主治医に相談するよう指導していくことが重要です。精神症状の発現リスクと、てんかん発作が抑制されないことによって生じるリスクとを比較して、妥当な薬剤を選択していただきたいと考えます。

 なお、多くの抗てんかん薬の添付文書の副作用欄にはさまざまな精神症状の発現が記載されています。とくに、米国FDAは2008年にすべての抗てんかん薬について自殺関連行動のリスクが高まることを記載するように製薬会社に求めました。これをうけて、日本でもすべての抗てんかん薬の添付文書のその他の注意の項に、「海外で実施された複数の抗てんかん薬における、てんかん、精神疾患等を対象とした199のプラセボ対照臨床試験の検討結果において、自殺念慮および自殺企図の発現リスクが、抗てんかん薬の服用群でプラセボ群と比較して約2倍高い」ことが記載されました。今後も抗てんかん薬使用に伴う精神症状については、変更や更新がありうるので、日常診療にあたっては添付文書の記載内容を適宜参照していただきたく思います。

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