臨床神経学

症例報告

右上大静脈の左房還流により奇異性脳塞栓症を来した1例

中嶋 恒男1)*, 酒井 俊宏1), 原 斉1)

Corresponding author: 市立吹田市民病院神経内科〔〒564-0082 大阪府吹田市片山町2丁目13番20号〕
1)市立吹田市民病院神経内科

症例は46歳の男性.4年前に脳膿瘍のため穿頭ドレナージ術を施行.術後,症候性てんかんのため,抗てんかん薬を内服していたが自己中断していた.てんかん発作のため他院に救急搬送.第3病日に右不全片麻痺出現,また急性薬剤性腎障害のため透析目的で当院に転院となった.第15病日に脳梗塞を再発し,原因精査の結果,右上大静脈(right superior vena cava; RSVC)の左房(left atrium; LA)への直接還流,左上大静脈遺残および心房中隔欠損を伴う心血管奇形を認め,RSVCのLAへの直接還流による奇異性脳塞栓と診断した.塞栓源として静脈血栓は検出されず,静脈ルートによる血栓や空気塞栓が疑われた.奇異性脳塞栓症を契機に発見された大静脈還流異常の症例であり極めて稀な症例である.
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(臨床神経, 58:171−177, 2018)
key words:奇異性脳塞栓症,脳膿瘍,大静脈還流異常,右左シャント

(受付日:2017年10月10日)