臨床神経学

症例報告

広範な脳萎縮と髄液IL-6上昇を伴いインフリキシマブを使用した慢性進行型神経ベーチェット病の1例

浜田 恭輔1), 武井 藍1), ア山 佑介1)*, 森山 宏遠2), 橋口 昭大1), 嶋 博1)

Corresponding author: 鹿児島大学病院神経内科〔〒890-8520 鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘8丁目35-1〕
1)鹿児島大学病院神経内科
2)川内市医師会立市民病院神経内科

症例は43歳男性である.緩徐に進行する構音障害と歩行失調,幼児退行などの精神症状,脳幹・小脳の萎縮性所見より脊髄小脳変性症が疑われ入院した.口内炎,陰部潰瘍,毛嚢炎様皮疹,HLA-B51をみとめ,髄液IL-6高値より慢性進行型神経ベーチェット病と診断した.ステロイド,メトトレキサートの治療効果に乏しく,インフリキシマブで髄液IL-6の減少が得られたが症状は改善しなかった.本症例は広範に不可逆性の脳組織障害が生じた難治例と考えられた.脳幹の萎縮が進行する前に免疫治療を介入すべき疾患であり,精神症状と運動失調症がみられる症例では診断に有用である髄液IL-6を測定することが望ましい.
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(臨床神経, 58:30−34, 2018)
key words:神経ベーチェット病,運動失調症,脳幹萎縮,髄液IL-6,インフリキシマブ

(受付日:2017年8月3日)