臨床神経学

症例報告

両側被殻出血による聴覚性失認の1例―回復経過に関して

時田 春樹1), 金谷 雄平2), 下江 豊2), 今川 まどか3), 福永 真哉4), 栗山 勝2)*

Corresponding author: 脳神経センター大田記念病院脳神経内科〔〒720-0825 広島県福山市沖野上町3-6-28〕
1)脳神経センター大田記念病院リハビリテーション科
2)脳神経センター大田記念病院神経内科
3)福山記念病院リハビリテーション科
4)川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科

症例は45歳,右利き男性.右被殻出血と10年後の左被殻出血による両側の聴放線の損傷で出現した聴覚性失認である.言語音,非言語音(音楽音,環境音)ともに認知障害を認め,神経心理学的検査の結果は著明に低下していた.4ヶ月後には回復が認められたが,標準注意検査の聴覚的要素の項目は依然と低下していた.言語音の回復が遅れたが,改善し始めると急速に回復した.その後,音楽音(リズムとメロデイー)も改善したが,環境音の改善が遅延し,解離が認められた.1年後には,仕事に復帰した.本邦の聴覚性失認の症例で発症後の経過が記載されている症例のレビューを行い,症状の回復経過を検討した.
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(臨床神経, 57:441−445, 2017)
key words:聴覚性失認,両側被殻出血,聴放線,回復経過

(受付日:2017年4月6日)