臨床神経学

短報

一過性の健忘症状を呈した成人発症神経核内封入体病の1例

竹下 潤1), 小林 宏光2), 下江 豊1), 曽根 淳3), 祖父江 元3), 栗山 勝1)*

Corresponding author: 脳神経センター大田記念病院脳神経内科〔〒720-0825 広島県福山市沖野上町3-6-28〕
1)脳神経センター大田記念病院脳神経内科
2)脳神経センター大田記念病院放射線科
3)名古屋大学大学院神経内科

症例は65歳の男性.全経過約3時間の一過性の健忘が出現した.3年前にも同様の症状が出現した.認知症状は認めず.神経学的には,小脳失調や不随意運動は認めなかったが,神経伝導検査で末梢神経障害を認めた.MRI拡散強調像で,前頭葉から頭頂葉にかけて皮質下の皮髄境界域に高信号を認め,皮膚生検で神経核内封入体を多数認め,成人発症の神経核内封入体病と診断した.家系内には類症者はおらず,孤発例である.健忘は一過性全健忘と極めて類似し,辺縁系障害が推測された.
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(臨床神経, 57:303−306, 2017)
key words:神経核内封入体病,成人発症,一過性全健忘,皮膚生検,拡散強調画像

(受付日:2016年12月22日)