臨床神経学

短報

辺縁系脳炎で発症した神経梅毒の1例

月田 和人1)3), 下竹 昭寛1)*, 中谷 光良1), 高橋 幸利4), 池田 昭夫2), 橋 良輔1)

Corresponding author: 京都大学大学院医学研究科臨床神経学〔〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54〕
1)京都大学大学院医学研究科臨床神経学
2)京都大学大学院医学研究科てんかん・運動異常講座
3)天理よろづ相談所病院神経内科
4)国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター

症例は46歳男性.5ヶ月前から性格変化や記銘力低下があり徐々に増悪し就業不能となった.頭部MRI T2強調像で両側内側側頭葉に異常高信号域を認め当初はウイルス性や自己免疫性の辺縁系脳炎を疑ったが,血清と髄液梅毒反応がともに陽性であったため神経梅毒と診断した.ベンジルペニシリンで治療し就業可能にまで回復した.辺縁系脳炎に類似した画像所見を示す神経梅毒の症例では,比較的若年発症,HIV陰性,亜急性経過の認知機能低下やてんかん発作の特徴を有するため,同様の臨床的特徴をもつ症例では積極的に神経梅毒を疑うべきである.さらに本症例は髄液の抗グルタミン酸受容体抗体が強陽性で,病態へ関与した可能性が疑われた.
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(臨床神経, 57:37−40, 2017)
key words:神経梅毒,辺縁系脳炎,内側側頭葉,抗グルタミン酸受容体抗体

(受付日:2016年7月30日)