臨床神経学

短報

幻嗅にドネペジルが著効したパーキンソン病の1例

長田 治1)*, 岩崎 章1)

Corresponding author: 深谷赤十字病院神経内科〔〒366-0052 埼玉県深谷市上柴町西5-8-1〕
1)深谷赤十字病院神経内科

症例は,74歳女性である.2010年頃,うつ症状,動作緩慢で発症し前医でパーキンソン病と診断された.2014年7月からは当科外来に通院していた.同年12月,便臭が気になるようになり,精神心療科を受診.クエチアピン25mg/日が追加された.2015年1月,身の回りのものに便臭がするとの幻嗅と食欲不振が出現.クエチアピンは75mg/日に増量されたが拒薬状態となった.ドネペジル追加後,幻嗅は消失し食欲も改善した.脳MRIで両側側頭葉の萎縮,N-isopropyl-p-(iodine-123)-iodoamphetamine single photon emission computed tomography(123I-IMP-SPECT)で両側側頭葉内側部の血流低下を認め,本症例の幻嗅に側頭葉内側部のアセチルコリン神経系の機能異常が関与している可能性が考えられた.
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(臨床神経, 57:29−32, 2017)
key words:幻嗅,パーキンソン病,ドネペジル,脳MRI,123I-IMP-SPECT

(受付日:2016年5月10日)